2026.05.21

北海道リースがカスハラ基本方針を公表。信頼関係を守るために「取引を断る」線を引いた理由|一般社団法人クレア人財育英協会

北海道リースがカスタマーハラスメント基本方針を公表

北海道リース株式会社は、「カスタマーハラスメントへの対応に係る基本方針」を公表しています。

同社が属するほくほくフィナンシャルグループは、「地域共栄」「公正堅実」「進取創造」の経営理念のもと、地域と顧客の繁栄に貢献し、ともに発展することを目指しているとしています。

一方で、その信頼関係は、職員一人ひとりが安心して働ける環境があって初めて維持されます。今回の基本方針は、顧客対応の丁寧さと、職員を守る線引きを両立させるための文書です。


カスハラの定義 クレームそのものではなく、手段と態様が問われる

北海道リースは、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づき、カスタマーハラスメントを定義しています。

対象となるのは、顧客等からのクレームや行動のうち、その内容の妥当性に照らして、実現のための手段や態様が社会通念上不相当であり、その結果、職員の就業環境が害される行為です。

ここで重要なのは、苦情や要望を否定しているわけではない点です。問題は、内容ではなく、相手を傷つけ、拘束し、働く環境を壊す方法にあります。


対象行為は暴力だけではない SNS投稿や無断撮影も含まれる

基本方針では、身体的な攻撃、精神的な攻撃、威圧的な言動、土下座の要求、継続的・執拗な言動、拘束的な行動、差別的な言動、性的な言動などが対象行為として挙げられています。

さらに、職員個人への攻撃や要求、許可のない職員や施設の撮影、職員の個人情報などのSNSやインターネットへの投稿、正当な理由のない過剰なサービスや金銭の要求も含まれています。

つまり、窓口で怒鳴る行為だけを想定しているわけではありません。スマートフォンで撮る、ネットにさらす、長く拘束する。現代のカスハラが持つ複数の形を、あらかじめ射程に入れています。


まずは落ち着いた話し合い それでも続く場合は外部専門家と連携

北海道リースは、職員がカスタマーハラスメントの対象となる行為を受けたと判断した場合、まずは落ち着いた話し合いを求めるとしています。

ただし、その行為が継続する場合や、程度が悪質と認められる場合には、警察や弁護士等に相談の上、適切に対処するとしています。

さらに、そのような場合には、今後の取引を断ることもあると明記しています。ここで、顧客との関係よりも職員の安全を優先する線が引かれています。


職員教育と被害職員ケアも明記 方針を現場で使えるものにする

基本方針では、カスタマーハラスメントに関する知識や対処方法などの教育を職員に実施するとされています。

また、カスタマーハラスメントで被害にあった職員のケアにも努めるとしています。被害を受けた後に「個人で乗り越えて」で終わらせない姿勢が示されています。

カスハラ対策は、ポリシーを掲げるだけでは機能しません。現場の職員が、何を記録し、誰に相談し、どこで対応を止められるのかを理解して初めて、方針は実務になります。


論点 信頼関係を壊すのは、苦情ではなく「理不尽を続けてもよい」という誤解です

企業にとって、顧客の声は重要です。苦情や要望の中に、サービス改善の種が含まれることもあります。

しかし、それを理由に、暴言、脅迫、土下座要求、SNSへの投稿、無断撮影まで受け止め続ける必要はありません。信頼関係は、一方が他方を傷つけ続けても維持されるものではないからです。

今回の基本方針が示しているのは、顧客を拒絶する姿勢ではありません。信頼関係を維持するために、越えてはいけない線を明確にする姿勢です。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 カスハラ方針は「現場が止まれるか」で決まる

この方針の価値は、対象行為を列挙したことだけではありません。警察・弁護士への相談、取引のお断り、職員教育、被害職員ケアまで含めている点です。ここも運用で決まります。

次の一手は3つです。
①初動:威圧的言動、執拗な要求、無断撮影、SNS投稿などがあった時点で、日時、相手、内容、対応経過を記録します。現場が一人で判断しない仕組みが必要です。
②通報設計:職員がすぐ相談できる内部ルートを整え、不利益取扱い禁止を明文化します。「対応を止めた職員が責められる」構造を残してはいけません。
③再発防止:警察・弁護士相談や取引停止に進む判断基準を、研修で共有します。心理的安全性と安全配慮義務は、理念ではなく停止手順で守るものです。


結語 顧客との関係を大切にするなら、職員を差し出してはいけない

顧客との前向きな対話は、企業にとって欠かせません。ですが、その対話は、職員の人格や安全が守られている時にだけ成立します。

判断軸は単純です。企業が顧客に向き合う時、職員を盾にしていないかどうかです。北海道リースの基本方針は、顧客との信頼関係を守るためにこそ、カスハラには線を引くという宣言です。


【出典】

カスタマーハラスメントへの対応に係る基本方針

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